FAとはつまり工場の自動化、要は人間が操作している工場の機械や、人間が行っている原料や完成品の運搬、その他諸々の工程をコンピュータ制御の機械やロボットを使って置き換え、効率化していくお仕事です。
使う技術も、
組込みからネットワークからそれらを統合した技術であるIoT(Internet of Things)、AIや画像処理、ロボット制御まで多岐にわたります。
それらの技術一つ一つはまあ詳しい記事がたくさん世の中にはあるのでここではちょっと私が仕事で「これは壁だなぁ」と思ったところを書いていきたいと思います。
壁1:技術理解の難しさ
上でも書きましたがFAは多岐にわたる技術を使います。
まあ、FAに限らずIT/ICTの特にSE職のお仕事って、大なり小なりそういうもんなんですが。
そして実は上で上げた技術は一つ一つに対しても業界形成されて、その中でいくつもの分野の専門開発会社が立つような、そういう粒度の技術なのです。
たとえば組込み技術分野だけでも、センサー制御、信号制御、ファームウェア開発、オペレーティングシステム開発、汎用系etcetc…挙げだすときりがないですし、それぞれを説明しだすともっときりがなかったりします。
そんな事情もあり比較的技術に明るいIT/ICT分野の人間はいざ知らず、「パソコンもオフィスくらいしか使用しません」、という方々を相手に説明をする必要があるので、理解し(たつもりになっ)て貰うのは容易なことではありません。
業務の時間をうまく工面して、本筋の開発のほかに、次や次の次に導入したいシステムの構想を練り、要素技術のデモンストレーションを作成し、デモンストレーションを見てもらう機会を設け、実現の難しさも含め説明しお金を出すことに納得してもらう。
このような一連の手順が必要になります。
壁2:ものづくり自動化への忌避感
実はこの項目が一番書きたいことです。
なぜなら、この記事を書こうと思ったきっかけは、2枚目の壁に対してショッキングな茶飲み話を職場でしたからなのです。
まずあたりまえのことですが、私たちSEは基本的に会社や社会を良くしたいと思って仕事をしています。
良くしたいとはどういうことかというと、FAであれば作ったシステムを使うことで、
「工場の人たちが楽に仕事ができる環境を作ること」であったり、
「末端作業から解放されてより技術習得に繋がる仕事に就ける環境を作ること」であったり、
要は3Kと言われる工場という職場を超絶ホワイトな職場に変えるお仕事です。
当然ながら、
末端作業員にも基本的に歓迎されたいと思いながら仕事をしています。
ですが現実にはそういうことでもないんですね。
次の壁3にも関連してきますが私たちのする仕事が、
「工員の働く場所や必要性を奪う」
「技術のない工員ばかり作る環境に繋がる」
そういう懸念が実は工場内には根強くあり、そのことを私は最近知りました。
つまり、
私たちがシステムを作る
↓
人が仕事しなくてよくなる
↓
現場の人間はいらなくなる
だから現状維持"が"良いという認識の連鎖です。
改めて調べてみると、世間の経営者の認識や経済紙、その他メディアの認識というのはこういう論点を軸に語られているものがほぼ全てと言ってもいい。
でも実際にはこの認識は全くの間違いなのです。
工作機械を使ったものづくりをすべて機械に置き換えたとして機械のオペレータという仕事は確かに不要になります。
ではこのオペレータの方は会社に要らなくなりますか?
いいえ、そうではないんです。
オペレータをしていた方は機械を操作する時間は確かに減ります。
そのかわりオペレータとして機械を操作した経験を生かして浮いた時間に、工作機械のより効率的な制御の検討や、工作機械自体の特性の研究、効率的な材料や工具の選定の研究、このような今少数の人間しか社内で行っていないような、より高度な仕事に割り当てられる時間が増えるのです。
そうして得られた知見を、また私たちSEがシステムに組み込むことで、ものづくりを高度化していく良循環を作り出すことが、ものづくり自動化の本当の意義なのです。
こういう考えをしっかりと説明して全体で認識を合わせて進めていくというのも、この仕事をするうえで超えるのが難しい大きな壁です。
壁3:不理解なメディアの煽り記事
三枚目の壁はとにかく憤りしかない。
曰く、
「AIが人の仕事を奪う」
「IoTで業務課題を解決する」
どうですか?
こういうタイトルの無責任な記事を皆さん見たことありませんか?
SEは口を揃えてこう突っ込みを入れます、AIは人の仕事を奪うものではそもそもないし、IoTは業務課題を解決するものではそもそもありません。
さらに業が深いのが、こういう記事を知った風に書いて世に公開しているのは、IT/ICTシステムを開発した経験の無いような経済評論家であったり、情報工学をかじってもいない全く別分野の学者連中であったり…
要は我々のやっている仕事の領域とは全くの無関係で造詣が深い訳でもない素人が、よく解らないままよく解らない人たちを扇動しているのです。
機会があれば注意してご覧になってみてくださいシステムの設計開発を行っているような肩書を持つ方が、このようなタイトルで記事を書いている例はほぼ皆無です。
この厚顔無恥で無責任且つ有害な扇動は、本当にSE業務に響いてきます。
先端技術は確かにその技術が適応できる分野ではこれ以上ないほどの効果を上げます。
しかし適応できない分野では、レガシーな技術の方が圧倒的に優れている場合が多いのです。
SEの技術力というのは、新しい技術や難しい技術を多く開発できることではありません。
多様な技術への造詣を用いて、今ある課題に最小のコストで最大の効果を出す技術を選び出し、開発を成功に導くことがSEの本来の技術力です。
しかし、メディアの間違った記事は人々に誤った認識を植え付け、
例えば、
「設計図から制御プログラム作ってくれるAIを作ってよ」←CAD/CAM使え
「この扉顔認証で施錠してよ」←カードキーの方が安くて早い
「事業計画つくるAI作ってよ」←AIは情報を分析する機械で情報を作る機械じゃないから
「IoT製品使って工程管理してよ」←どういう管理したいのかちゃんと洗い出してから言え
こういう頓珍漢なオーダーに繋がるわけです。
最後に
同じSE職の方であればこのような壁には一度はぶち当たったことがあるのではないでしょうか?
同時にSE職でない人に対しても解り難いこの仕事、業界ではありますが、私らがどんなことを気にして仕事をするのか、理解する一助になってもらえれば幸いです。
0 件のコメント:
コメントを投稿